被災の鶴岡「元気です」
「酒井さん、元気ですか?地震は大丈夫かい?」。東京で勤務していた時に一番仲の良かった同期のYくんからメールが届いた。
2011年9月に私の結婚式に招待し、鶴岡にも来てくれた。それ以来、お互いに仕事やプライベートが忙しくてなかなか会えずにいた。連絡も途絶えがちになっていたので、久しぶりのメールである。地震の揺れと同じくらい「おっ!」と驚いてしまった。
6月18日に発生した本県沖地震では、県内外から何百という安否確認や御見舞、励ましのメールや電話、手紙をいただいた。
本当にありがとうございます。致道博物館内にある建物の漆喰の壁に亀裂が入ったり、土器が割れたり、大小さまざまなことはありましたが、皆無事です。そして元気です。
何より、致道博物館そして酒井家、私のことを心配してくださる方々が日本中にこんなにたくさんいらっしゃるということに… あらためて、責任の重大さにも気付いたのである。
世の中には目に見えるものと見えないものがある。有形、無形の事象がある。目に見えるものは分かりやすい。異変にもすぐに気づける(ひび割れとか)。以心伝心というが、今回の地震の時のような相手を心配する気持ち、安堵の気持ち、ありがとうという感謝の気持ち、さまざまな気持ちや心の奥底は、言葉や文章などの形にしなければ相手には伝わらないものである。
今回、多くの方々の誠意が心に響いた。私もこれからは思っていること、感じていることを素直に形に表していこうと強く心に誓ったのである。
先日、久しぶりに東京に出張した。社会人時代を通算すると10年超過ごした都会の喧騒。タピオカミルクティに並ぶ人の行列。来年のオリンピックに向けて、人・ヒト・ひと、外国人も多く活況だった。
そういえば、過去、知り合って時間を共有した仲間たち。あの人今どうしているのかな?とふと思い出す。これまで上京して時間がある時は学生時代を過ごした大学のキャンパスや喫茶店、住んでいた町などを訪れた。過去の自分、歴史の再確認。街並みは変わり、以前住んでいたアパートは取り壊されて跡形もなくなっていた。形あるものは時間の経過とともに変わっていく。それでも過去の思い出や心の中の風景はずっと変わらないものだ。
新宿駅でたくさんの人々と擦れ違いながら、皆それぞれに家族がいて、友人がいて、仲間がいるのだという当たり前のことを考えた。この中に知り合いが一人もいない現実に(当然なのだが)、これまで出会った人々との出会いこそがまさに奇跡だったのだと少しセンチメンタルな気持ちになった。
災害やピンチの時、人とのつながりのありがたさを実感する。今回、鶴岡が被災地として全国的にも注目され、「鶴岡といえば…酒井さん、大丈夫かな?」と友人・知人が心配してくれたのだろうか。
とにかく元気な鶴岡、元気な自分を表現したい。8月15日は荘内大祭本祭である。荘内藩伝承大名行列では、久しぶりに藩主役という大役を務める。
「お馬さん、可愛い~」。一昨年の荘内大祭の大名行列。沿道からの声援。例年、私が乗っている馬の方が注目を浴びる。私、黄金の甲冑まで着てノリノリだったのだけど。確かに馬はかわいい。沿道を闊歩する馬は確かにインパクトがある。この大名行列が馬を見る絶好の機会であることも事実である。私も馬が大好きだし、かわいいとも思うが、今年こそ、馬並みの存在感を示したい(笑)
何よりも「鶴岡は元気です!」というPRができれば幸いです。温かいご声援をよろしくお願いいたします。そして、8月17日は赤川花火大会、8月18日はおぃやさ祭と続きます。海水浴、温泉、だだちゃ豆、お祭り、鶴岡の夏をたくさんの方々に楽しんでいただきたいです。鶴岡でお待ちしております。
2019年(令和元年)8月4日(日曜日)山形新聞 総合2面 日曜随想11-⑦