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思い出の場所

昭和46年、「酒井氏庭園」は、京都の作庭家、田中泰阿弥(たいあみ)氏によって、数年の歳月をかけて、入念に復旧整備された。田中氏は、庭園の構成が、江戸時代末期の『築山庭造伝』にある「真の築山(つきやま)」と合致することを指摘。昭和51年には貴重な大名庭園として国の名勝に指定された。「これだけの庭が作られるについては、既にそれを必要とするだけの高度な文化の素地があった筈」(文化庁鑑査官・吉川需(もとむ)氏)。

「酒井氏庭園」はかつて鳥海山を借景としていた。幕末に建てられた藩主の隠居所「御隠殿」の奥座敷から望む庭園はまた格別である。

池の向こう正面、築山の中ほどに石を立て、庭景の中心とし、左手の州浜に滝のように水が流れ込み、峡谷の風情がある。右手には、亀頭形の名石の出島があり、入り江としている。石組みに力強さがあることで、全体に静かな趣を見せている。
私にとってこの庭園は、子どもの頃に鬼ごっこやザリガニ取りをした遊び場であり思い出の場所。酒井氏庭園を訪れる多くの方々の思い出の場所になれるように。これからもしっかりと守っていきたい。

 Bloom 2021.6 Vol.93 知新-新しきを知る-第22回(最終回)

これまで「知新」をお読みいただきありがとうございました。毎号楽しく執筆することができました。酒井家庄内入部400年、そして次の500年に向けて。これからも歴史と文化を守るべく努力して参ります。新企画連載でお会いしましょう。