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生活の知恵

致道博物館の館内をご案内すると、特に興味を持っていただけるのが、旧渋谷家住宅(重要文化財)である。湯殿山麓の県内でも有数の豪雪地帯・朝日村田麦俣から移築保存された民家は、狭い山峡の敷地と深い雪の生活に適応して三層、四層に空間を求めるつくりとなっており、多層民家とも呼ばれている。

つい先日も外国の要人をご案内した。入口から入ってすぐ右側にあるデベヤという若夫婦の部屋の説明をした。この部屋の床下でニワトリを飼って、若夫婦は早朝に時を告げる声で目覚める…。とても興味深かったのか、外側に出て何度も床下を覗き込まれていた。

創建以来、多くの人が出入りしたであろうこの建物。外国の人も含めて多くの人の心に残るのは、ここで暮らした先人の生活の知恵や温もりを肌で感じることができて、ここでの生活を容易に想像できるからではないか…としみじみと思うのである。

この旧渋谷家住宅は1822(文政5)年創建、1965(昭和40)年に致道博物館の構内に移築保存された。致道博物館内の歴史的建造物群の中で実は一番古い建物である。これからも何万・何十万という人々がここを訪れるだろう。歴史・文化を大切に守っていかなければ…と気を引き締める。

 Bloom 2018.8 vol.77 知新-新しきを知る- 第6回