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時空超え語り継ぐもの

今年の正月は家族でゆっくり過ごすスロースタート。子どもたちと「映画ドラえもん のび太の恐竜 2006」のDVDを鑑賞した。子どもの頃に何度も見て、この作品はそのリメーク版。これは時空を超えたのび太と恐竜ピー助の家族愛のドラマなのである。その昔も子ども心に感動したのだけど…今回も終盤で涙が止まらない。うぅぅぅ…。それを見て子どもたちはどん引き。「お母さん、お父さんが泣いているよ。何か悲しいことがあったのかな?」…なぜ感動しない?ホワィジャパニーズピーポー? いや、子どもたちよ? 少し早すぎたか?

私の性格について。ドラマや映画などを見て、全米よりも子どもたちよりも感動して泣いてしまうくらいの感動屋である。

さて、時計の針を元旦に戻そう。酒井家の元旦は「旧庄内藩酒井家年賀の会」から始まる。場所は荘内神社の参集殿。私の子どもの頃から続く元旦恒例の行事で酒井家ゆかりの方々や地元政財界の方々など約100人をお招きして開催される。今はとても誇りに感じているが、子どもの頃は正直、この年賀の会がとても嫌だった。大人たちに囲まれる小一時間は子ども心には永遠の時間に感じられた。当時は致道博物館新館2階(美術展覧会場)で行われており、祖父母・両親・姉と並んで新年のご挨拶をしていたのをまるで昨日のことのように思い出す。和やかというよりもどちらかというと厳かな雰囲気の中で、ちょっとしたことで笑いが止まらなくなり笑いを噛み殺すのに苦心したっけなぁ。今となっては本当に良い思い出であり、それはそれでとても楽しかったのだと過去を美化する自分がいる。

今年の「旧庄内藩酒井家年賀の会」は少し趣が違っていた。ちょうど来庄されていたタイ国際航空のスメート・ダムロンチャイタム社長のご家族・ご一行様をご招待したのである。酒井家年賀の会史上はじめての海外からのゲスト。祖父母が存命だったならば、さぞやびっくりしたことだろう。「なぜタイから?」と思われた方もいらっしゃると思うので少し補足説明を。実は酒井家は一般社団法人「みちのくインバウンド推進協議会」のタイ・モニターツアーで重要な訪問先の一つとして位置づけられていたのである。私自身もタイのツアー客のホスト(もてなし役)としてたくさんのタイの方々にお会いしてきた。そして、昨年4月にはみちのくインバウンド推進協議会のメンバーの方々、庄内・最上の政財界の方々とともに訪問団を結成しタイを訪問、文化大臣などから国賓級の温かい歓迎を受けたのである。タイでのおもてなしに、その心に、感動の涙を流したのは言うまでもない。このように日タイ両国の多くの方々の長年に渡る努力が実り、仙台‐バンコク間の定期便の復活の可能性が高まり、今回のタイ国際航空のスメート社長の来庄・酒井家年賀の会へのご招待につながったのである。

…正月気分にも瞬く間に別れを告げて、忙しい毎日に逆戻りした2月。日々、子どもたちと接して感じるのは、子どもたちは「今」を生きているということ。気づいたらすっかり大人(しかも結構おじさん)になっていた自分も、子どもの頃は「今」だけを必死に生きていた。大人になるということは、「今」だけでなく、過去(歴史)も未来も背負って生きていくということなのかもしれない。

それにしても酒井家… 背負うべき過去(歴史)があまりにも壮大すぎる。それでも!世の中には時空を超えて語り継がれる名作・名品がたくさんある。それらには、人を感動させる物語や歴史がある。自分自身が感動屋だからこそ、皆さまに感動していただけるようなストーリーとヒストリーを輝ける未来に向けて創造していきたい… そう心に誓った平成最後の正月であった。

 2019年(平成31年)2月10日(日曜日)山形新聞 総合2面 日曜随想 11-②