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遠き道を 急ぐべからず

今年の自分の1年を振り返るために、日曜随想をすべて読み返してみた。いかに自由に楽しく執筆させていただいたのかを改めて実感。深沈厚重な文章ではなかったかもしれないが、周囲の方々からはおおむね好評で、掲載の都度、励ましの言葉や感想をいただいた。読者の皆さまに改めてお礼を申し上げます。

さて、初回の署名(酒井忠順)と2回目以降の署名が異なっていたことに皆さまお気づきだろうか?初回、「世が世なら…でなくても」の掲載後のことである。「文章はとても良かったのに…署名がね…」そう何度か言われたのだ。確かにこのときの自分の字が何だかとても恥ずかしくなったので、山形新聞社にお願いして署名を差し替えさせていただいた。前代未聞かもしれないし、大変なご迷惑をおかけしてしまった。差し替えた署名も、100回くらい(いやそれ以上か)書いた中でのベストなものを選択したのだが。車は急には止まれないのと同じで、字は急にはうまくならないのであった。これが今の自分の精いっぱい。勉強不足だった。

そして、私の来年の抱負、いまさらであるが書道をはじめたいと思っている。物事に遅すぎることは決してないと信じて。これからの人生の課題として、しっかりと時間をかけて楽しんで臨みたい。

とにもかくにも今年はうれしい楽しい1年であり、挑戦の年でもあった。旧荘内藩藩主酒井家墓所の保存・管理を担い2022年の公開に向けて取り組むべく一般社団法人を設立したこと。そして、クラウドファンディング(山形サポート)への挑戦。賛否両論を乗り越えて、絶賛の嵐(と信じ込む)。12月18日現在、支援総額45万5千円、達成率22%、これまで37人の方々からご支援をいただいた。今回は目標金額を集めることだけが目的ではなく、庄内藩そして酒井家の歴史を広くPRし、歴代藩主が眠る墓所が現存しているという事実をお知らせしたかったのである。目標金額を達成できなかった場合の予防線…ではないのだが。

とはいえ、正直申し上げると日曜随想の最終回(今回)までに目標を達成し、お礼と感謝の気持ちを述べてかっこ良く、最後を締めくくりたいと当初は思っていた。その見通しはまったく甘かった。この挑戦は来年1月末まで続くのだが、最後まで諦めず、ご賛同いただける皆さまお一人お一人と信頼関係を積み重ねていきたいと思っている。

もしも目標金額を達成できたら。それはあくまでスタートラインであり、本当の始まりである。今はこの挑戦を、日曜随想の執筆と同じくらい楽しんでいる。毎日、ハラハラドキドキワクワクしながら。妻には「スマホばっかりみて!」と怒られながら。
「人の一生は 重荷を負うて 遠き道を行くが如し 急ぐべからず」

徳川家康の有名な遺訓である。人生とは何かしらの重い荷物を背負って、遠い道のりを歩いているようなもの。しっかりと着実に一歩ずつ歩んでいこう。急ぐべからず…とはいえ、気持ちは急ぐもの。あわよくば近道や抜け道、別の移動手段や言い訳を考えてしまいがちであるが、特に自戒しなければならない。

最後に… 先日、ふと子どものころに合唱で歌った大地讃頌を思い出した。その昔、歌いながら、なぜか涙が止まらなかったという記憶がある。「先生、酒井クンが泣いています」周囲の友だちは皆困惑していた。合唱して感極まって泣くという、どうやら私は少々独特で感受性豊かな子どもだったようだ。よく言えば、昔から感動屋さんだったということか。

母なる大地の ふところに 我ら人の子の 喜びはある 大地を愛せよ 大地に生きる 人の子ら その立つ土に感謝せよ…
正直、今歌っても泣けてくる。母なる大地、故郷に、そして日曜随想の執筆の機会をいただいたことに心から感謝したい。

 2019年(令和元年)12月22日(日曜日)山形新聞 総合2面 日曜随想11-⑪